高次脳機能障害と画像①

高次脳機能障害の認定に、画像所見はとても重要な意味を持ちます。

自賠責保険での後遺障害等級認定も含め、高次脳機能障害と認められるには、以下の3点が必要とされています。

・事故後の意識障害の有無。意識障害がある場合はその程度と障害回復までの期間。

・CTやMRIなどの画像上何らかの異常所見があるかどうか。

・事故後の行動の変化(易怒性が増す、計算ができなくなる、方向が分からなくなるなど)の有無。

このうち、画像所見については、脳外科や神経内科、精神科の医師に画像を確認してもらい、その異常個所をチェックしてもらうことになります。

 

ここで大切なことは、画像は(特にびまん性軸索損傷の場合は)、時期をずらして複数回撮影する必要があるということです。

たとえば、事故で頭部を強打した場合、通常は脳が腫れるため、脳と頭蓋骨との間はほとんど隙間がなくなります。

その後、時間を経ると、脳の大きさが元に戻っていくことになりますが、事故の影響で脳の神経等を損傷した場合、その部分が死んでしまうため、元の大きさに比べその分縮むことになります(脳室は逆に拡大します)。

このような変化を見ることで、脳へのダメージを間接的に図ることができるわけです。

ただし、事故後しばらくして脳室が拡大(脳が縮小)しているからといって、それだけで脳へのダメージが確認できるわけではありません。

なぜならば、脳の大きさには個人差があるからです。

一般的な人に比べれば脳の大きさが小さくなっていたとしても、それは個人差の範囲であることも多く、それだけでは決め手にならないこともあります。

左右差があれば別ですが、全体的に脳萎縮が進んでいる場合には、年齢的なものもあって判断が難しいのです。

そうすると、脳が事故前の大きさと同じかどうかが分かれば一番いいわけですが、さすがに事故直前にMRI画像を撮っている人は少ないため、最後は他の所見(くも膜下出血や硬膜外血腫など)と合わせて判断することになります。

その場合も、出血痕は時間とともに消失することが多いので、時期をずらして画像を撮影し、それを見比べることが重要になります。

※もちろん、脳挫傷など、脳の一部が明らかに傷ついているといった局在性の傷害であればその1枚の画像でも十分であることもあります。しかし、それはまれなことですし、そもそもそれほどのお怪我であれば、高次脳機能障害の認定に困難は少ないと思います。